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相続放棄と相続財産清算人に関するQ&A

  • 文責:弁護士 寺井渉
  • 最終更新日:2024年3月22日

相続財産のなかに不動産がありましたが、相続放棄をすれば保存義務を負いませんか?

相続放棄をする時に、その不動産を占有していた場合には、他の相続人や選任した相続財産清算人に、その不動産を渡すまでは保存義務を負います。

法律では、相続放棄をした者は、放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続放棄によって相続人となった者や、相続財産清算人に相続財産を引き渡すまで、「自己の財産におけるのと同一の注意」をもって、その財産を保存しなければならないと定められています(民法940条1項)。

民法の条文はこちら

相続財産を「自己の財産と同一の注意」力で管理しなければならないとは、どの程度の注意力が求められるのですか?

民法で求められる注意義務の程度には、「善良な管理者による注意」と「自己の財産に対するのと同一の注意」があります。

「善良な管理者による注意」義務は、他人から依頼された事務を処理する場合に求められる注意義務で、その人の職業や社会的地位から考えて、通常要求される程度の注意をいいます(民法644条)。

「自己の財産に対するのと同一の注意」とは、この「善良な管理者による注意」よりも注意義務が軽減されたものです。

ただ、軽減されているとはいえ、注意する義務はありますから、例えば、相続放棄をした相続財産のうちに空き家があり、外壁や屋根が傷んで壊れ、通行人等に怪我をさせてしまったような場合には、保存義務を問われ、損害賠償義務を負う可能性があります。

相続人がみんな相続放棄をして、誰も相続しない状態となった不動産は国や地方自治体に寄付できませんか?

資産価値がある不動産であれば、地方自治体が寄付を受け入れてくれる可能性はありますが、誰もが相続放棄するような不動産の場合、管理費用の方が高くつく可能性が高いため、地方自治体でも寄付は受け付けてもらえないと思われます。

そのような場合は、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらい、売却等の手続きを進めてもらう必要があります。

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