預貯金の名義変更
1 預貯金の相続手続きの必要性
被相続人名義の預貯金は、被相続人が亡くなったことを金融機関が知ると、凍結されてしまいます。
預貯金が凍結されると、相続の手続きや名義変更の手続きをとらない限り、預貯金の出金が原則としてできなくなってしまいます。
それでは、具体的にどのような手続きを行えば、預貯金の相続を行うことができるのでしょうか?
ここでは、預貯金を相続するための手続きについて、説明していきたいと思います。
2 戸籍の取得
預貯金の名義変更手続を行うためには、まず、相続関係を明らかにするため、戸籍を取得する必要があります。
ここでは、被相続人の相続人が誰かを特定するために必要な戸籍を一通り揃える必要がありますので、相続関係や転籍の状況等によっては、かなりの量の戸籍を取得しなければなりません。
たとえば、相続人が被相続人の子のみである場合も、以下の戸籍を取得することとなります。
⑴被相続人の出生から死亡に至るまでのすべての戸籍
⑵相続全員の現在の戸籍
これらの戸籍について、少しでも欠落があると、手続きを進めることができなくなってしまいますので注意が必要です。
戸籍を一通り取得すると、法務局に申請をし、法定相続情報証明を取得することができます。
法定相続情報証明の取得は必須ではありませんが、取得しておくと、1枚の書類だけで相続関係を証明することができます。
こうした戸籍一式か、法定相続情報証明を提出することにより、相続手続きを進めることができるようになります。
3 遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書は、相続手続きでは作成しておくと望ましい書類です。
遺産分割協議書を作成しておくと、誰がどの相続財産を取得するかが明確となり、後日の紛争を回避することができます。
また、遺産分割協議書があれば、預貯金を取得した相続人が、単独で、金融機関の手続きを進めることができるようになります。
遺産分割協議書については、相続人全員の実印の押印を得て、相続人全員の印鑑証明書を添付します。
これらの条件を満たすことにより、遺産分割協議書を金融機関等での相続手続き・名義変更手続に用いることができるようになります。
なお、印鑑証明書につきましては、金融機関が有効期間を設けていることがあります。
有効期限は半年にしている金融機関が多いですが、3か月にしている金融機関も存在します。
4 金融機関の所定の書類の作成
これらに加えて、金融機関の所定の書類を作成すると、預貯金の名義変更を進めることができるようになります。
金融機関の所定の書類は、相続手続依頼書等の名称が書かれています。
その書類を作成するには、相続人が署名し、実印を押印する必要があります。
遺産分割協議書を作成していると、署名・押印を行うのは、預貯金を取得する相続人だけで良いことがほとんどです。
一方、遺産分割協議書を作成していない場合は、すべての相続人が署名、押印を行う必要があります。
以上の手続きが完了すると、金融機関側の事務処理が完了し次第、預貯金の名義変更がなされることとなります。