遺産分割協議書の書き方(株式、投資信託、国債、社債の場合)
1 遺産分割協議書の注意点
遺産分割協議書は、財産の払戻しや名義変更を行うときに利用されます。
このため、遺産分割協議書の記載方法は、金融機関や証券会社が手続きを進めるにあたり、有効と認めるものになっている必要があります。
株式、投資信託、国債、社債については、取得の対象となる財産が特定されていなければ、払戻しや名義変更の手続きを進めることができなくなってしまいます。
それでは、これらの財産を特定できるようにするには、どのように遺産分割協議書に記載すれば良いのでしょうか。
2 株式の場合
株式については、窓口となっている証券会社、銘柄、株数によって特定します。
たとえば、「●●は●●証券伊勢支店の株式(●●株式会社 300株、■■株式会社 100株)を取得する」といった記載を用いることで、取得する株式を特定できます。
ところで、被相続人が2009年以前から株式の取引を行っていた場合には、窓口となっている証券会社が存在しないことがあります。
これは、2009年に、株券の電子化が進められ、各会社が設定している単元株ごとに、証券会社の口座に移管されることとなりましたが、単元未満株があった場合には、単元未満株は移管の対象にならなかったためです。
こうした単元未満株については、窓口となっている証券会社が存在しません。
このような場合には、銘柄、株数のみで特定することとなります。
その他、株式のことで、遺産分割協議書を作成するにあたって注意しなければならないのは、相続後に、株式分割、株式併合が行われ、株数の変動が生じている可能性があるということです。
たとえば、相続時点で、●●株式会社の100株があり、遺産分割協議書にも100株と記載したとします。
ところが、遺産分割協議の前に株式分割が行われており、●●株式会社の株数が500株になっていたとすると、残りの400株については、誰が取得するかが定まっていないことになってしまいます。
こうした事態を避けるためにも、遺産分割協議をする時には、最新の残高報告書を確認し、現時点での株数を確認するべきでしょう。
3 投資信託の場合
投資信託についても、窓口となっている証券会社・金融機関、銘柄、口数を遺産分割協議書に記載して特定します。
たとえば、「●●は●●証券伊勢支店の投資信託(●●ファンド 3万口)を取得する」といった記載をすることで、取得する投資信託を特定します。
4 国債、社債の場合
国債、社債については、窓口となっている証券会社・金融機関、銘柄(名称、回号)、額面額によって特定します。
たとえば、「●●は●●銀行伊勢支店の個人向け国債(変動10年、第●号、 額面100万円)を取得する」といった記載を用いることで特定します。
5 預り金、MRF等の資産に注意する
証券会社での取引を行うにあたっては、元手になるお金が必要となります。
こうした元手として、証券会社に口座が設けられ、預り金が存在している可能性があります。
また、株式の配当、投資信託の分配金、国債、社債の利息についても、証券会社の預り金口座に入金されていることがあります。
遺産分割協議書を作成する際には、証券会社の預り金も漏らさずに記載するべきでしょう。
また、証券会社によっては、こうした預り金が、MRFに切り替えられていることがあります。
MRFは、投資信託の一種ですが、評価額がほぼ固定されており、即時換金も可能ですので、普通預金に近いものになります。
MRFが存在する場合も、遺産分割協議書に漏らさずに記載するべきでしょう。
預り金やMRFの有無、金額については、証券会社の残高報告書で確認することができます。
これらの金額は随時変動しますので、最新の残高報告書を確認する必要があります。
なお、「●●はその他●●証券伊勢支店に預託しているすべての財産を取得する」と記載すれば、預り金やMRFを含めて分割の対象にすることができます。
最新の預り金やMRFの残高が特定できない場合等には、このような記載を用いることもあります。
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